FET型番の読み解き方:型番から特性を見抜く実践ガイド
FET(電界効果トランジスタ)の型番は一見すると無秩序な文字と数字の羅列に見えますが、実はそこには製造メーカー、ドレイン-ソース電圧、ゲート駆動電圧などの重要な情報が隠れています。本記事では、代表的なFETの型番構成を読み解き、用途に適したトランジスタを選ぶ方法をわかりやすく解説します。
1. IRFとIRL:標準駆動とロジックレベルの違い
Infineon(旧International Rectifier)が製造するIRFシリーズとIRLシリーズには、ゲート駆動電圧の違いがあります:
- IRFシリーズ: 約10V以上のゲート電圧が必要な標準MOSFET。
- IRLシリーズ: 5Vや3.3Vでも駆動可能なロジックレベルMOSFET。
マイコンやArduinoなどの低電圧システムでは、IRLシリーズがより適しています。
2. 型番に含まれる情報(データシートなしでもある程度判断可能)
- 数字部分: 耐圧や電流容量の目安となる場合が多い。例:IRF540N ≒ 100V, 33A。
- Nの末尾: Nチャネル型であることを示す。
- Pの末尾: Pチャネル型で、ハイサイドスイッチに適している。
型番をある程度読めるようになれば、用途に応じた初期選定がスムーズになります。
3. メーカーごとの命名規則
| メーカー | 型番例 | 特徴 |
|---|---|---|
| Infineon | IRF540N, IRLZ44N | 定番の高電流用MOSFET |
| STMicroelectronics | STP55NF06 | 型番内に電流や耐圧の目安が含まれる |
| onsemi(旧Fairchild) | FQP30N06L | 安価で入手しやすい |
| Vishay | SIR800DP | 表面実装型、スイッチングに強い |
4. データシートで最終確認すべき項目
型番からおおよその目安はつくものの、以下の仕様は必ずデータシートで確認しましょう:
- ゲート閾値電圧(VGS(th)): 使用予定の制御電圧でON可能か。
- ドレイン-ソース間抵抗(RDS(on)): 小さいほど発熱が少ない。
- ゲート電荷量(Qg): スイッチング速度の目安。
- パッケージ形状: TO-220なら放熱性に優れ、SMDなら省スペースに最適。
5. まとめ
FETの型番を読む技術は、回路設計者にとって大きなアドバンテージになります。パーツ選定や設計の効率が上がるだけでなく、不要なミスを減らす助けにもなります。最終的にはデータシートの確認が必須ですが、型番から得られる知識を活用すれば、選定の初期段階で大きな差がつくでしょう。
