なぜ音は水中のほうが空気中より速く伝わるのか?

水中で聞こえる音が、空気中よりも早く伝わるように感じたことはありませんか?潜水艦は数キロメートル離れた相手の音を即座に感知できますが、空気中では同じ距離の音が遅れて届き、さらに減衰します。この違いの理由は、圧縮性密度という2つの物理的特性にあります。

 

 

音とは何か?――振動の伝播

音とは、媒体(物質)の中を粒子の振動が次々に伝わっていく現象です。このとき、音の速さに影響を与えるのは次の2つの要素です。

  • 体積弾性率(バルクモジュラス):圧力がどれだけ速く伝わるかを表す指標
  • 密度:物質の単位体積あたりの質量

これらは以下の式により、音の速度を決定します:

音速 v = √(体積弾性率 / 密度)

つまり、体積弾性率が大きく、密度が小さいほど、音は速く伝わります。

空気と水中における音速の比較:空気中では分子の間隔が広く、音速は343m/s、水中では分子が密集し、音速は1500m/sと表示され、「音波」の線で両者がつながれているイラスト。

空気 vs 水:どちらが速い?

空気と水の音の伝わり方を比較してみましょう。

媒体 音速(25℃) 密度 体積弾性率
空気 約343 m/s 約1.2 kg/m³ 低い
約1500 m/s 約1000 kg/m³ 非常に高い

水は空気よりも密度が高いですが、それ以上に体積弾性率が大きいため、結果として水中では空気中よりも4~5倍速く音が伝わります。

 

 

この原理を活用した技術

この性質を活かした代表的な技術がソナー(SONAR)です。ソナーは水中に音波を発射し、その反射時間から物体までの距離や位置を測定します。

また、クジラやイルカなどの海洋生物は、同じく低周波音を用いて何千kmも離れた仲間と通信することができます。これは、空気中での人間の声が数十メートルで減衰するのと対照的です。

このように、水中での音の伝達特性は、探査・通信・軍事監視など多くの分野で利用されています。

 

 

固体では音はさらに速い

興味深いことに、音は液体よりも固体中のほうがさらに速く伝わります。例えば、鉄の中では音速は約5000 m/s、ダイヤモンドでは12000 m/sを超えます。これは、固体の分子が密に並び、振動が効率的に伝わるからです。

そのため、線路に耳を当てると、遠くの列車の接近を目で見るよりも早く音で感知することができるのです。

身近な例

  • 潜水艦の音響通信(ソナー)
  • 水中捜索における位置検出
  • クジラの超長距離通信
  • 線路に耳を当てて列車を感知

 

 

結論:音速は媒体に依存する

音の速さは一定ではなく、通過する媒体の性質によって変わります。空気、水、固体はそれぞれ密度と弾性率が異なり、それが音の伝達速度に直接影響を与えます。

この原理を理解することで、自然現象への理解が深まるだけでなく、通信・工学・生物学分野での技術開発にもつながります。